USDeシンセティックドル・プロトコルを運営するイーサナは、ハイパーリキッドの新たなステーブルコインUSDHの発行権争いから撤退した。これは、コミュニティメンバーやバリデーターとの直接協議の中で提起された懸念に応じたものだ。
イーサナは木曜日にX上で 声明を発表 し、自社がハイパーリキッドネイティブのプロジェクトではないことに対する反発を認め、ライバルのネイティブマーケッツを祝福して身を引くと表明した。同社は現在、争いの有力候補とみなされている。
「一部からはネイティブマーケッツの信頼性の欠如が指摘されているが、彼らの成功はハイパーリキッドとそのコミュニティの特異性を完璧に体現していると思う」とイーサナ・ラボの創設者ガイ・ヤング氏は 述べ 、「ここは新興勢力がコミュニティの支持を得て、公平に成功の機会を与えられる場だ」と付け加えた。
イーサナの撤退は、複数のチームがUSDH発行権を巡って提案を競う中で大きな転換点となった。イーサナが退いたことで、ポリマーケットの予測市場ではネイティブマーケッツの勝率が92%に達し、パクソスが約7%で続いている。
批判派はUSDHの入札プロセスの公平性を疑問視
イーサナの評価、すなわち入札が公平な競争の場であったという見方に同意する者ばかりではない。批判派は、ネイティブマーケッツの実績の乏しさや、プロセス自体の公平性に疑問を呈している。
暗号資産ベンチャー企業ドラゴンフライのマネージングパートナーであるハシーブ・クレシ氏は火曜日、「USDHの提案募集は茶番に思えてきた」と記し、バリデーターがネイティブマーケッツ以外のチームを真剣に検討する姿勢を欠いていたと主張した。
同氏によれば、ネイティブマーケッツの提案は募集開始直後に登場し、「事前に通知を受けていたことを示唆している」という。他の応募者が提出準備に追われる一方で、ネイティブマーケッツにとっては「特注のプロセス」に見えたと述べた。パクソス、イーサナ、アゴラといった実績ある企業が、より強力な提案を示していたにもかかわらず、ネイティブマーケッツに有利な展開となった。
リリアン・アリアガ氏（OAKリサーチの最高執行責任者兼共同創業者）は、ネイティブ・マーケッツがすでに投票の70％以上を確保したことに疑問を呈した。「敬意を払って言えば、USDHを数十億規模のステーブルコインにできるとは到底思えない」とXに書き、結果について「バイアスが働いている」と付け加えた。
一方で、別の見方もある。フェニックス・ラボの最高経営責任者兼共同創業者であり、スパークのコア貢献者でもあるサム・マクファーソン氏はコインテレグラフに対し、「ネイティブ・マーケッツが最適な選択肢である可能性は十分にある。ただし、法定通貨担保型ステーブルコインの発行者としては、パクソスがこの分野の業界リーダーであり、USDP、PYUSD、USDGなどを発行してきた」と述べた。
最終的に誰が勝利するにせよ、その結果はハイパーリキッドおよびより広いステーブルコイン市場に大きな影響を及ぼすことになる。
「今回の賭け金は大きい。ハイパーリキッド上には約50億ドルのUSDCが存在し、概算ではこれはサークルの事業の約10％（年間収益にして約2億ドル）に相当する」と、ファルコンXのリサーチ責任者デービッド・ラワント氏は述べた。
USDH投票の仕組み
USDH投票は、資産の定例的な上場廃止を除けば、ハイパーリキッドにとって初の重要なガバナンス決定となる。投票はすべてオンチェーンで行われ、バリデータの投票権はステークされたHYPEトークンの量に基づいて決まる。提案が可決されるには、全ステークの3分の2以上の賛成が必要となる。
バリデータが意向を示した後、デリゲーターは自らの好みに沿うバリデータへHYPEを再デリゲートできる。
今回の結果を左右し得たのは、ハイパーリキッド財団とリキッド・ステーキング提供者キネティクの2者であり、この2者で全体の約63％を支配できたが、両者とも棄権することを約束した。
スケジュールは厳しい。提案は水曜日に締め切られ、バリデータは24時間以内に支持を表明、その後短い再デリゲーション期間が設けられる。最終投票は日曜日10時から11時（UTC）に行われる予定だ。
ネイティブ・マーケッツのUSDH計画
ネイティブ・マーケッツは、ハイパーリキッド初のネイティブ・ステーブルコインUSDHの発行権をめぐって競うために設立された新組織である。同グループは、ハイパーリキッドの投資家兼アドバイザーであるマックス・フィーゲ氏、ユニスワップ・ラボの元社長兼最高執行責任者MC・レーダー氏、ブロックチェーン研究者で元パラダイムの貢献者アニシュ・アグニホトリ氏が率いる。
同社の提案は「最もハイパーリキッド・ネイティブ」であることを強調しており、USDHをHyperEVM上で発行し、その収益をエコシステムに還元することを約束している。
USDH準備金から得られる利息の半分は支援基金を通じてHYPEの買い戻しに充て、残り半分はHIP-3市場やHyperEVMアプリなどエコシステムの成長に投じる計画だ。
USDHは現金と短期米国債で裏付けられ、オフチェーン準備金は当初ブラックロックが管理し、オンチェーン準備金はストライプ傘下のブリッジを通じてスーパー・ステートが監督する。
ただし、このブリッジ依存には批判もあり、単一障害点を生みかねないとの指摘が出ている。
アゴラ創業者のニック・ヴァンエック氏は、ストライプのより広い野心がハイパーリキッドと衝突する可能性を疑問視している。「ハイパーリキッドがその基軸ステーブルコインをストライプに譲り渡すなら、明確な利益相反を抱える垂直統合型の発行者に依存することになる。我々はいったい何をしているのか？」と述べた。
フィーゲ氏もこうした懸念を認めている。「私たちが新しいチームであることは承知しており、自らを証明する責任を軽くは考えていない」と木曜日にXに投稿した。
bitbankで新規口座開設後、1万円の入金でもれなく現金1,000円プレゼント！【PR】
