CRP-1が登場：香港の暗号資産規制新ルール徹底解説、仮想通貨業界の構図が塗り替えられる

CRP-1の新しい要件を詳しく見て、他国・地域の規制政策と比較し、これらの変化が私たち暗号資産ユーザーにどのような影響をもたらすかについて話しましょう。

技術革新の波に後押しされ、世界の暗号資産市場規模は急速に拡大しています。その一方で、価格の激しい変動やマネーロンダリングなど一連のリスクも顕在化し、効果的な規制の必要性が一層高まっています。2025年9月、Hong Kong Monetary Authority（HKMA）は、現地銀行業界に向けて「銀行業規制政策マニュアル（SPM）」の新モジュールCRP-1「暗号資産分類」の意見募集稿を発表しました。これは国際的な規制基準と歩調を合わせ、イノベーションの発展とリスク管理の両立を図る規制体系を構築し、銀行業が暗号資産関連業務に参加する際の明確な指針を提供することを目的としています。

続いて、私たちのチームがCRP-1の新しい要件を詳しく解説し、他国・地域の規制政策と比較し、これらの変化が暗号資産ユーザーにどのような影響をもたらすかを見ていきます。

01 香港CRP-1新規則のコア内容解読

（一）基本的な定義：規制範囲と適用対象

CRP-1新規則はまず暗号資産規制の明確な範囲を定め、今後の実施の基礎を固めています。具体的には、新規則は暗号資産を以下のように定義しています：主に暗号技術と分散型台帳技術（DLT）または類似技術に依存し、支払いや投資目的、または商品やサービスの取得に利用できるもの。ただし、中央銀行が発行するデジタル通貨はこの範囲に含まれないと明確にしています。これにより、暗号資産を正確に定義し、法定デジタル通貨と区別し、規制範囲が広がりすぎるのを防いでいます。

規制対象については、新規則は香港のすべてのライセンスを持つ金融機関、例えば正規銀行、制限付きライセンス銀行、預金を受け入れる会社などを対象としています。これらの機関は香港金融システムの重要な構成要素であり、彼らが行う暗号資産業務は金融の安定に直接影響します。これらを規制下に置くことで、リスクを根本から管理できます。

リスク管理の面では、新規則は「一つも漏らさない」戦略を取っています。銀行自身が保有する暗号資産、顧客のために保管・取引することで生じるリスク、または金融派生商品を通じて間接的に暗号資産に接触することで生じるリスク、すべてが管理対象となります。これにより、金融機関が規制の抜け道を利用して逃れることができず、すべての暗号資産関連リスクが厳格に管理されます。

（二）コア分類

リスクの階層化はCRP-1新規則のコアロジックであり、新規則は暗号資産のリスク緩和能力に基づいて、第1グループ（低リスク）と第2グループ（高リスク）に分類しています。下記の表で、そのコア分類が一目で分かります。

02 CRP-1と国際規則（BCBS基準）の連携と差異

（一）BCBS基準のコアロジック

Basel Committee on Banking Supervision（BCBS）は、世界の銀行業規制の中核機関として、2022年12月に「暗号資産リスクエクスポージャーの慎重な取り扱い」を発表し、2024年7月に「暗号資産基準改訂」を導入しました。これにより、世界統一の暗号資産規制フレームワークが構築され、そのコアロジックは「リスク階層化、慎重な管理」と要約できます。

規制目標として、BCBS基準は「暗号資産リスクの防止と銀行の資本充実の確保」をコアとし、暗号資産リスクが伝統的な銀行システムに波及するのを防ぎ、世界の金融安定を維持します。コアフレームワークでは、BCBSは暗号資産をリスクに基づき「グループ1」と「グループ2」に分類し、高リスク資産には厳格な資本要件を設け、グローバルな規制協調を推進し、規制アービトラージを防止します。

BCBS基準の導入は、世界の暗号資産市場の急速な発展とリスクの蓄積に起因し、国際的に活動する銀行に統一された規制基準を提供し、「金融安定」と「責任あるイノベーション」のバランスを取り、各国の規制機関に参考フレームワークを提供することを目的としています。

（二）CRP-1とBCBSの連携

CRP-1新規則とBCBS基準は多くの重要な点で一致しており、香港が国際金融センターとして世界の規制動向にしっかりと追随している姿勢を示しています。

資産分類の観点から見ると、CRP-1は暗号資産を「第1グループ」と「第2グループ」に分け、BCBSは「グループ1」と「グループ2」に分けています。分類のコア基準はどちらも資産のリスク管理能力です。例えば、コンプライアンスを満たしたステーブルコインなどリスクが低く信頼性の高い資産は、BCBSでは「グループ1」、CRP-1では「第1グループ」に該当し、両者ともこの種の資産に明確な法的規定とリスク管理を求めています。リスクの高い資産については、両者とも金融機関に対し十分な資本準備を義務付け、「リスクが高いほど規制が厳しい」という理念を十分に体現しています。

資本規制要件については、CRP-1は基本的にBCBSの慎重な管理方針を踏襲しています。BCBSは、一部の高リスク暗号資産について、金融機関が資産価値の1250%に相当する資本を準備する必要があると規定しており、CRP-1の「2bグループ」資産も同じ基準です。流動性の高い暗号資産については、BCBSはコンプライアンスを満たした取引所で取引され、一定の市場規模に達していることを求めており、CRP-1の「2aグループ」資産も同様に、規制された取引所での取引、市場価値や取引量の基準を設け、投入資本と資産リスクのバランスを確保しています。

また、CRP-1とBCBSはともに包括的な規制を強調しており、銀行自身が保有する暗号資産だけでなく、顧客サービスに関連する資産や間接的なリスクも規制範囲に含め、誰も管理しない「グレーゾーン」をなくし、世界統一規制の目標を実現しています。

03 CRP-1新規則が暗号資産ユーザーに与える具体的影響

CRP-1新規則の施行後、銀行の暗号資産業務は大きく調整され、私たちユーザーの売買、保管、利用などに直接影響します。

まず取引の選択肢について、新規則により取引可能な資産やチャネルが「厳格化」されました。高リスクの2b類資産、例えば一部のNFTやガバナンストークンは銀行で取引できなくなり、他のプラットフォームを利用するしかありませんが、これらのプラットフォームは信頼性が低い場合もあります。1類のコンプライアンス資産は安全ですが、選択肢が減ります。2a類資産はライセンスを持つ取引所で取引する必要があり、口座開設審査が厳しく、ハードルも高くなります。次に資産の安全性ですが、新規則により資産のカストディはより安全になり、プラットフォームに問題があっても優先的に資金を回収できますが、マネーロンダリング対策が厳格になり、個人のプライバシー空間が狭くなり、資産ごとの価格変動も異なってきます。

2b類のNFTやガバナンストークンなどを保有している方には、HKMAの規制下または国際的なコンプライアンス資格を持つプラットフォームを優先的に選択し、すべての資産を一箇所に集中させないことをお勧めします。1類のコンプライアンス資産を好むユーザーは銀行の安全性を享受できますが、購入できるものが少ないことを受け入れる必要があります。2a類資産を取引する方は、事前に身分証明書や銀行カードなどの書類を準備し、取引所の厳格な審査に備えてください。どの資産を保有していても、投資ポートフォリオの再構築や銀行手数料の変化に注意し、新規則による安全保障を享受しつつ、プライバシー保護と利便性のバランスを見つける必要があります。

最後に

以上の通り、香港CRP-1新規則は暗号資産規制分野で顕著な先見性を示し、業界の発展とリスク管理に新たな考え方と方向性を提供しています。

私たちは、香港の暗号資産規制が今後、動的な最適化と実践の深化段階に入ると認識しています。今後、規制機関は国際的なトレンドにしっかりと追随し、クロスボーダー規則の協調を強化する必要があります。業界参加者は、日常的なコンプライアンスコミュニケーションの仕組みを構築すべきです。香港がCRP-1を契機に、規制テクノロジーを改善し、投資家保護とイノベーションのバランスを取り、グローバルな規制の模範となることを期待しています。