英国、米国、新たな仮想通貨に関する協力協定を発表へ

英国、米国、新仮想通貨協力協定を発表へ

英国政府は市場監督強化のため、仮想通貨監督に関する米国規制当局との新たな連携を計画している事がわかった。

英国政府は、仮想通貨規制について米国との協力拡大を発表する準備を進めている。この合意は、ロンドンで行われたレイチェル・リーブス（Rachel Reeves）英国財務相とスコット・ベッセント（Scott Bessent）米国財務長官による高官級会合を受けて締結された。

両国は、ステーブルコインとデジタル金融に焦点を当て、仮想通貨規制の整合性確保に取り組んでおり、今回の動きは、監督枠組みを整合させ、両国で大きく成長しているデジタル資産市場の監督を強化するものだ。

両国の連携は規制に焦点か

連携は、市場行動、AML基準（マネーロンダリング=資金洗浄）対策、ステーブルコイン規制に焦点を当てる可能性が高い。これらの分野では、ばらばらなアプローチが政策担当者の間で懸念を引き起こしている。

英国は、ステーブルコインとデジタル決済資産を対象とする最近の法律制定により、デジタル資産の潜在的なグローバルハブとしての地位を確立。2025年4月に公表される英国の 仮想通貨制度草案 は、今回の米英間の連携協議の背景にある重要な要素となっている。両国は、ブロックチェーンの試験運用のためのデジタル証券サンドボックスの設置を目指しているという。

2000年金融サービス・市場法（規制対象活動および雑則）（暗号資産）に関する2025年命令案に基づき、政府は「適格暗号資産」および「適格ステーブルコイン」を FCA （金融行動監視機構）の規制対象に正式に組み込む予定である。この改革には、ステーブルコインを発行する企業と仮想通貨を保管するカストディアンに対する行動規範および健全性要件に関する提案が含まれている。

デジタル金融の共同テスト

コインベース（Coinbase）、サークル（Circle）、リップル（Ripple）、シティバンク（CitiBank）、バンク・オブ・アメリカ（Bank of America）などの業界関係者が参加したこの会合では、デジタル資産、ステーブルコインが経済成長を牽引する可能性が強調された。

会議では、ブロックチェーンと証券の試験運用のための共通の規制サンドボックス開発の可能性についても議論された。企業は両国市場で協調的な監督の下、国境を越えて利用されることを目的としたデジタル資産向け製品をテストすることが可能になる。

共同サンドボックスの概念は、イノベーションを促進するために国境を越えたモデルを提唱してきた SEC （米国証券取引委員会）のヘスター・パース（Hester Peirce）委員の提案と類似。 CFTC （米国商品先物取引委員会）などの米国当局は既に、Crypto Sprintプログラムなど、限定的な暗号資産試験プログラムを試行しており、これは双方の協調のための枠組みとなる可能性がある。

戦略の中核にはステーブルコイン

ステーブルコインは議論の中で重要な位置を占めており、米国は、ドルに裏付けられたステーブルコインを世界通貨支配のツールと位置付け、英国当局は、ワシントンの明確な方針に追随するよう圧力を受け、国内企業は規制の遅れが海外の人材を圧迫していると警告している。

コインベース （Coinbase）のグローバル諮問（しもん）委員会に所属するジョージ・オズボーン（George Osborne）元財務大臣は、英国はステーブルコイン政策において「完全に取り残されている」と述べたうえで、次のように指摘している。

仮想通貨とステーブルコインに関して、そして他の多くの分野と同様に、厳しい現実はこうだ。われわれは完全に取り残されている。追いつく時が来たのだ。

市場へのアクセス改善と競争力回復にはルール統一が不可欠

英国当局者は、トランプ政権が仮想通貨分野におけるイノベーションを継続的に推進していることから、英国にとって仮想通貨分野に大きなチャンスがあると述べている。

協力を加速させる動きは、英国の仮想通貨関連団体が二国間協定にデジタル資産を含めるよう求めたことを受けて行われた。2025年8月、暗号資産業界の関係者30人がリーブス氏に宛てた公開書簡の中で、「英国はデジタル資産時代にルールを作る側ではなく、ルールを受け入れる側にならないよう、今すぐ行動を起こさなければならない」と主張。同氏は、ワシントンとの連携強化は、特に英国上場企業がより高い評価を求めて米国の取引所に移転する中で、米国からの投資拡大につながる可能性があると述べた。なお、英国当局は、市場へのアクセス改善と競争力回復には、ルールの統一が不可欠だと考えている。

協調的な大西洋横断アプローチは、企業が管轄区域間のギャップを悪用する規制裁定を減らす可能性がある。今回の発表は、EU（欧州連合）加盟国やアジア太平洋諸国を含む複数の国が独自の仮想通貨に関するルールブック最終決定期に行われており、米国と英国の連携により、他の管轄区域に基準の調和を迫る圧力がかかる可能性がある。