暗号資産の「無人地帯」：サイクルのシグナルはすでに現れているが、多くの人は全く気付いていない

作者：Christina Comben

出典：The Coin Republic

原題：The Forgotten Phase: Why the Crypto Market Might Be Stuck Between Cycles

翻訳・編集：BitpushNews

重要ポイント：

• 暗号資産市場はブルマーケットでもベアマーケットでもなく、「忘れられた中間段階」にある可能性があり、これは2019年の量的引き締め終了後の静かな時期と似ており、多くの場合、新たな上昇の始まりを示唆しています。

• 米連邦準備制度理事会（Fed）が量的引き締めを終了した政策や、類似した市場リスクスコアの水準は、暗号市場が調整段階にあることを示しており、崩壊の前兆ではありません。

• 短期的な変動はあるものの、暗号資産に好意的な規制政策、ETFの導入、機関投資家による大規模な採用により、2025年の市場基盤は2019年よりはるかに堅固なものとなっています。

市場の現状：定義しにくい状態

「今はブルマーケットなのか、それともベアマーケットなのか？」——この暗号市場で最も議論される問いは、2025年末にはもはや当てはまらなくなっているかもしれません。トレーダーやアナリストが現在の市場にラベルを貼ろうとすると、この市場は単純な定義を拒んでいることに気づきます。

暗号資産の価格は2021年の放物線的な上昇を再現できていませんが、本格的なベアマーケットのような絶望にもほど遠い状況です。では、実際には何が起きているのでしょうか？

暗号トレーダーのDan Gambardelloはこれを「サイクルの“忘れられた章”」にいる可能性があると解釈しています。

この静かな段階は2019年7月から9月の時期と非常によく似ています。当時、市場は横ばいで推移し、米連邦準備制度理事会（Fed）は量的引き締めを終了し、暗号市場は次の大きな動きの前に奇妙な停滞期に入ったかのようでした。

2019年の亡霊

2019年7月の暗号ニュースを振り返ると、米連邦準備制度理事会（Fed）は正式に量的引き締めの終了を発表し、この政策転換は世界的な流動性に微妙で重要な変化をもたらしました。

数か月後の9月、政策引き締めは正式に停止されました。これはその後の緩やかな上昇の道を開き、最終的に2020～2021年の市場爆発を引き起こしました。

現在、歴史は繰り返されているように見えます。米連邦準備制度理事会（Fed）は再び2025年12月に量的引き締めを終了することを発表しました。この2つの時期では、マクロ流動性はすでに転換し始めていますが、市場の暗号価格への信頼はまだ追いついていません。

「量的引き締め終了のニュースがちょうど発表されたばかりだ」とGambardelloは動画で述べ、「これはブルマーケットの頂点でもなく、ベアマーケットの底でもなく、その中間の曖昧な領域にある」と語っています。

この「中間状態」は暗号ニュースでしばしば見過ごされがちですが、実はサイクルリセットの重要な段階です。2019年、bitcoinのリスクスコアは約42で推移しており、現在の43点とほぼ同じです。価格は異なりますが、市場心理は同様の不確実性を示しています。

暗号市場リスク指標と忍耐の価値

「QT終了が流動性の押し上げをもたらすと信じるなら、2025年12月までのいかなる調整局面でも段階的にポジションを構築することを検討してください」とGambardelloは提案しています。

彼が開発した「Zero」というAI駆動システムは、資金を合理的に配分し、市場のモメンタムを追いかけるのではなくリスクエリアを特定することを推奨しています。

彼は、2019年のEthereumのリスクモデルスコアは11であり、現在は44であると指摘しています。Cardanoのスコアは29です。これらの数値はボラティリティとセンチメントデータに基づいており、マクロ投資家が感情的に変動を取引するのではなく、ポジション構築のエリアを計画するのに役立ちます。

もしスコアが30や20のゾーンに下落すれば、長期保有者が待ち望む蓄積の好機となる可能性があります。

Glassnodeのデータはこのパターンを裏付けています。中期的な調整期間中、長期保有者の供給量は投機的トレーダーの撤退とともに通常増加します。

2019年、bitcoinの長期保有者の割合は流通供給量の644％を超えていました。2025年、この数字は再び同じ水準に近づいています。忍耐こそが冷静な投資家の秘密兵器のようです。

（チャート出典：studio.glassnode.com）

チャートが示すもの

Ethereumの週足チャートでは、動きが驚くほど似通っています。2019年7月、QT終了直後にEthereumは20週移動平均線をテストし、反発後に再び下落し、数か月後にようやく本格回復しました。

今年の夏も同じく20～50週移動平均線のクロスが再現されました。これは、サイクルが常に希望と疲労の間で引っ張り合うことを改めて思い出させてくれます。

Gambardelloは、注目すべきシグナルはEthereumが20週移動平均線を突破できるかどうかだと説明しています。これは市場が2019年の動きを繰り返すかどうかを判断する短期的な確認シグナルです。

そうでなければ、時価総額が一時的に3兆ドル台（現在CoinMarketCapが示す3.6兆ドルから下落）に落ち込む可能性があり、これは当時のシナリオの再現となるでしょう。下落幅は個人投資家を怯えさせるには十分ですが、上昇トレンドを終わらせるほどではありません。

異なる10年、同じ市場心理

もちろん、2025年は2019年の単なるコピーではありません。暗号ニュースのヘッドラインはすでに異なり、マクロの舞台も大きく変化しています。

暗号資産に好意的な米国政府が誕生しました。「Clarity Act」や「GENIUS Act」により、かつて投資家を眠れなくさせた規制の不確実性はほぼ終焉を迎えました。Ethereum ETFもすでに上場取引されています。

ステーブルコイン発行者は規制下に置かれ、BlackRockは現在250億ドルの暗号ETF資産でトップに君臨しています。

このような機関の力は一夜にして消えるものではありません。むしろ、市場のリズムを変え、かつてアドレナリンで動いていた市場を、スプレッドシートとストレステストで管理される分野へと変貌させました。

私たちが目撃しているのは、もう一つのブルマーケットやベアマーケットではなく、より微妙な変化、すなわちより大きな金融気候システム内部の移行段階かもしれません。

米連邦準備制度理事会（Fed）の流動性転換、5月以前の新議長の就任、そして規制の正常化が相まって、2025年は次の上昇前の静かな準備期間となる可能性があります。

Gambardelloは、私たちがベアマーケットに入っているとは考えておらず、「いらだたしい調整段階」にあると見ています。

確かに、これはいらだたしいものです。しかし、必要なものかもしれません。2019年の暗号市場が私たちに教えてくれたことがあるとすれば、それは「退屈こそがブレイクアウトの前兆である」ということです。