「To VB」プロジェクトが再び投資を獲得、Ethereumのベテランが手を組み「コンプライアンス対応プライバシープール」を発表

0xbowは、実質的にコンプライアンス対応版Tornado Cashです。

執筆：Eric，Foresight News

11月18日、Privacy Pools（プライバシープール）開発チームの0xbowが発表したところによると、350万ドルの資金調達を完了しました。本ラウンドはStarbloom Capitalがリードし、Coinbase Ventures、BOOST VCなどのベンチャーキャピタルや、元Coinbase CTOのBalaji Srinivasanなど複数のエンジェル投資家が参加しました。

Privacy PoolsはEthereum FoundationのKohakuプロジェクトの中核コンポーネントであり、コンプライアンスを前提とした資金移動のプライバシー実現を目的としています。Privacy PoolsはVitalik Buterinが執筆に関与した「アソシエーションセット」に関する研究を基に開発されており、アソシエーションセットとは簡単に言えばプライバシープロトコルの「チート防止装置」であり、不正を企む者がプライバシープロトコルを利用してミキシングを行うのを防ぎ、同時に疑わしい活動を監視することができます。

Privacy Poolsは、To VB（Vitalik Buterin）型スタートアップの典型的な事例でもあります。プライバシーの話題はZcash誕生時からWeb3業界で避けて通れないテーマとなっていましたが、ゼロ知識証明（ZKP）技術の発展とコンプライアンス対応の進展により、プライバシーは理論から実際のプロダクトへと進化しました。

Privacy Poolsとは？

ドキュメントによると、Privacy PoolsはZKPとコミットメントメカニズムを組み合わせてプライバシー取引を実現しています。ユーザーは資産をプライバシープールに預け入れ、その後一部または全額を引き出すことができ、預入アドレスと引出アドレスの間にオンチェーンの関係を作る必要がありません。このプロトコルはアソシエーションセットプロバイダー（ASP）を利用して承認された預金のグループを維持し、不正資金がシステムに流入するのを防いで規制要件に適合させています。

一見Tornado Cashと似ているようですが、実際にも非常に似ています。違いは、Privacy Poolsがネイティブにコンプライアンス機構を実装している点です。

Tornado Cashは、ハッカーのマネーロンダリングツールとして批判された後、「コンプライアンスツール」をリリースしました。このツールは、Tornado Cashから取引所に資金を移す際にZKPを提供し、自分の資金が合法かつコンプライアンスなアドレスから来ていることを証明できますが、これはプライバシーの度合いを大きく損なうものでした。

Privacy Poolは、より優れたプライバシー層のソリューション、すなわち前述の「アソシエーションセット」を提供します。アソシエーションセットは手動で管理されるリストであり、ユーザーがPrivacy Poolに資金を預け入れる際、プロトコルは預金情報を「許可リスト」に追加し、将来の引き出し時にZKPでプロトコルがサポートする預入アドレスとの関係を証明することで引き出しが可能となります。

ユーザーがPrivacy Poolに預け入れる際、前述の「コミットメント」をZKPで提出し、資金の出所がコンプライアンスであることを証明します。その後、アソシエーションセットが預金情報をリストに追加します。将来の引き出し時には、ZKPで引出アドレスと特定の預入アドレスとの関係を証明することで引き出しが実現します。

この過程で問題となるのは、アソシエーションセットが審査情報の遅れにより違法資金を誤って受け入れる可能性があることです。ここで「手動管理」が役割を果たし、違法資金がプールに入った場合でも、アソシエーションセットは不適格なアドレスを許可リストから手動で除外できます。

このような状況に対応するため、Privacy Poolは「Ragequit」機能を設計しており、資金が他のアドレスでの引き出しを禁止された場合、元の預入アドレスに資金を戻すことができます。

2人のEthereumベテランが指揮

0xbowはAmeen Soleimani、Nathaniel Fried、Zak Coleの3人によって共同設立されました。Privacy Poolは今年3月にメインネットにローンチしたばかりですが、アソシエーションセットの論文は2023年9月にすでに発表されており、コンセプト検証から実装まで1年半を要しました。

共同創業者3名のうち2名はEthereumエコシステムの「ベテラン」です。CTOのAmeen Soleimaniは2016年にConsenSysでステートチャネルの研究を主導し、退職後はEthereum公共プロダクトを支援する非営利組織MolochDAO、ステーブルコインRAIの発行元Reflexer Finance、イランへの人道支援を行うDAO IranUnchainedなどに中核メンバーとして参加しました。

Zak Coleの経歴はさらに豊富で、2018年には企業向けEthereum技術の推進団体Enterprise Ethereum Alliance（EEA）の会長を務め、その後Whiteblock、Syscoin、DeFi Pulse、Slingshot、Code4renaなど多くのプロジェクトに関わりました。

Nathaniel Friedは前述の2人ほどの経験はありませんが、0xbow以前は国家安全保障に特化したBlacklakeや英国のオープンソースインテリジェンス企業、非営利組織で働いていました。Nathaniel FriedのXアカウントの紹介文でもオープンソースインテリジェンスへの強い関心が示されています。

The Blockの報道によると、本ラウンドの資金調達前に、0xbowはBankless、Number Group（Zak Coleが共同創業者兼CEO）、Public Works、Frax創業者Sam Kazemian、Metamask開発主導者Dan Finlayなどから投資を受けていました。

EthereumのKohakuプライバシー計画

Vitalikは最近アルゼンチンで開催されたEthereum開発者カンファレンスで、Ethereum向けプライバシーツールフレームワークKohakuを発表しました。私たちは「V神『Do Not Be Evil』ロードマップ：Ethereumにおけるプライバシーの新たな位置付け」でVitalikの計画を簡単にまとめました。

簡単に言えば、KohakuはPrivacy PoolsやRailgunなどのプロトコルを組み合わせ可能なモジュールとしてパッケージ化し、将来的にはネットワーク層の匿名化やゼロ知識証明ベースのブラウザなどにも拡張する予定です。これに合わせて、財団内には数十名の研究者とエンジニアからなるPrivacy Clusterが設立され、従来のPrivacy & Scaling Explorationsチームは「Privacy Stewards of Ethereum」に改名され、新技術の探索からプライバシー投票や匿名DeFiなど具体的なシナリオでのエンジニアリング実装へとシフトしています。将来のEthereumは、「透明な決済レイヤー＋プログラマブルなプライバシーレイヤー」の組み合わせに近づき、完全公開と完全ブラックボックスの間で単純に揺れ動くものではありません。

Kohakuは単独のプロダクトではなく、ウォレットなどに統合可能なスイートを目指しています。例えばMetamaskがKohakuを統合すれば、匿名送金を実現したい場合、バックエンドでPrivacy Poolsを利用することができます。

ユーザーにとって、0xbowはエアドロップ狙い以上にプライバシーツールとして有用です。特に資金規模の大きいユーザーにとって、ウォレットの秘密鍵がコピーなどで頻繁に操作され安全性が低下した場合、このプロトコルを利用して安全に資金を新しいアドレスに移すことができます。しかし、このプロトコルには根本的なロジック上の欠陥も存在します。大口ユーザーの場合、引き出す資金が大きいと、預金額の小さいアドレスが自動的に関連付けから除外されてしまいます。

例えば、現在プールに10人が預金しており、9人は預金額が1ETH未満、1人が100ETHを預けている場合、この大口ユーザーが1回の預金額で1ETHを超えたり、引き出し回数が多すぎたりすると、アドレス間の関連性が簡単に追跡されてしまいます。ユーザーは利用時にプール内の資金総額や他のユーザーの預金額に注意し、プライバシー向上のための行動がかえって他人に自分の情報を知られる証拠を増やさないように注意が必要です。