執筆者：Yuuki，深潮 TechFlow
現FRB議長のパウエルの任期は2026年5月に満了となりますが、昨日アメリカ財務長官のベセントは、トランプがクリスマス前に次期FRB議長の指名候補を発表する可能性が高いと明かしました。FRB議長の金融政策スタンスは、今後の利下げペースやその最終地点に大きな影響を与えます。クリプト市場は流動性や金利に最も敏感な市場であり、次期FRB議長の金融政策がハト派かタカ派かは極めて重要です。本稿では、現在注目されている候補者の政策スタンスとその就任がクリプト業界に与える影響、当選の可能性、重要なタイムラインを概観します。
1. ケビン・ハセット Kevin Hassett：最もハト派の候補、トランプ経済顧問（最もポジティブ）
ハセットは元ホワイトハウス経済諮問委員会議長であり、トランプの中核的な経済ブレーンです。トランプの利下げ意向をFRBに持ち込むことができる候補者です。彼は経済成長を刺激するため、より深く迅速な利下げを公然と支持してきました。また、クリプト市場に対して友好的な姿勢を示し、bitcoinをインフレヘッジのツールと見なしています。クリプト市場への規制緩和を推進する可能性もあります。もしハセットがFRB議長に就任すれば、高金利に敏感なクリプト市場にとって絶対的な好材料となり、迅速かつ大幅な利下げはリスク資産に次の流動性ブルマーケットをもたらすでしょう。
2. ケビン・ウォッシュ Kevin Warsh：最もタカ派の候補、CBDC支持・分散化に反対（最もネガティブ）
ウォッシュは元FRB理事で、フーバー研究所の研究員です。金融政策では長期にわたりタカ派の立場をとり、金利引き締めやインフレ抑制を優先（中央銀行のバランスシート縮小も主張）しています。彼が就任すれば、金利の急速な低下が遅れるか制限され、クリプトなどリスク資産のバリュエーションや資金流入が抑制される可能性があります。また、ウォッシュはアメリカのCBDC（中央銀行デジタル通貨）開発を公然と支持しており、分散化や検閲耐性を重視するCrypto原理主義者にとってはネガティブ材料となります。
3. クリストファー・ウォラー Christopher Waller：堅実型候補、ステーブルコイン支持（中立）
ウォラーは現FRB理事で、金融政策では堅実なハト派です。段階的な利下げを支持し、公の場でデジタル資産が決済手段の補完となり得ると発言しています。適切な規制の下であれば、ステーブルコインがドルの地位を強化できると考えています。ウォラーの堅実なスタイルは大幅な金融緩和を制限する可能性があり、彼が就任した場合、今後の金利パスの進展は全体のFOMC構成をさらに分析する必要があります。
4. リック・リーダー Rick Rieder：中立寄りハト派、BTCなど主流資産にポジティブ（ポジティブ）
リーダーはBlackRockグローバル債券部門のチーフであり、1兆ドル規模の資金配分を直接コントロールしています。彼の金融政策スタンスは中立寄りのハト派で、FRBは中立金利に到達した後は慎重かつ柔軟であるべきだと強調しています。また、伝統資産の相関性が高まる環境下で、クリプトには独自のリスクヘッジ・分散価値があるとし、bitcoinを「21世紀のゴールド」と称しています。彼が就任すれば、機関投資家のクリプト市場への資金配分を促し、市場のボラティリティを抑えることで、BTCなど主流クリプト資産にとってポジティブとなるでしょう。
5. ミシェル・ボウマン Michelle Bowman：タカ派候補、クリプト市場への発言は少ない（ネガティブ）
ボウマンは現FRB理事であり、そのタカ派的な金融政策スタンスはウォッシュ以上とも言われています。市場が利下げを広く予想し、トランプ政権からの圧力が強まる中でも、長期間の高金利維持を明確に主張し、再度の利上げも排除しないと繰り返し発言しています。彼女が就任すれば、クリプト市場やリスク資産にとって実質的なネガティブ材料となるのは間違いありません。
上記5名の候補者の現時点での当選可能性
現在この件は大統領指名段階にあり、予測市場Polymarketではケビン・ハセットKevin Hassettが52%の指名確率で大きくリードし、Bloombergの独占報道でもハセットがトップランナーとされています。2位はクリストファー・ウォラーChristopher Waller（指名確率22%）、3位はケビン・ウォッシュKevin Warsh（指名確率19%）、続いてリック・リーダーRick Riederが2%、ミシェル・ボウマンMichelle Bowmanが1%となっています。
注目すべき重要なタイムライン
FRB議長の交代は2段階を経て行われます。第1段階はトランプチームによる候補者の面接・選定で、最終的な指名者は1名のみとなります。アメリカ財務長官ベセントの発言によれば、トランプはクリスマス前に正式に指名者を発表する予定です。もしハセットが指名されれば、クリプト市場はクリスマスラリーを迎える可能性が高いです。第2段階は指名者が決定した後、上院での投票です。上院では2026年1～2月に公聴会、3～4月に委員会および本会議での投票が行われる見込みです。なお、Polymarketでは12月にトランプが正式に指名者を発表しない確率が32%残っています。
まとめ：現時点ではハセットの当選確率がリードしていますが、債券利回りやリスク資産価格にはまだ織り込まれていません。今後もこの動向を継続的に注視する必要があります。短期的には、クリスマス前にトランプがハセットを指名すれば、クリプト市場はクリスマスラリーを迎える可能性が高いです。長期的には、次期FRB議長の金融政策スタンスが今後4年間のリスク資産の価格動向に直接影響を与えることになります。
