Zamaがトークンオークション計画を発表、FHEが初めてブロックチェーン発行シナリオに導入

ZamaはブロックチェーンのHTTPS時代を築けるか？

執筆：Sanqing，Foresight News

12月1日、Zamaは2026年1月12日から15日にかけてEthereum上でシールドビッド方式のダッチオークションを開催し、総トークン供給量の10%を販売、1月20日から受け取りが可能になると発表しました。今回のオークションでは、Zama独自開発の完全同型暗号（FHE）技術を用いてすべての入札額を秘匿し、オンチェーンでの入札過程を秘密に保つことで、フロントランニングやGas戦争を回避し、より公平な価格発見を実現します。

Zamaは、このイベントは資金調達のためではなく、プロトコル開始前に完全にアンロックされ流通可能なトークンを、開発者、ノードオペレーター、コミュニティ参加者により公平に分配することを目的としていると述べています。これはFHE技術が大規模なブロックチェーン発行シーンで初めて実用化されるケースであり、Zamaはこのオークションを通じて、プライバシー計算と資産オンチェーンのセキュリティにおけるコア能力を示すことも狙いとしています。

ZAMAトークン

Zamaはまだ完全なトークノミクスを公開していません。既知の情報によると、ZAMAトークンはZamaプロトコルのネイティブトークンであり、主に手数料支払い、ステーキング、ガバナンスの3つの機能を担います。プロトコルはバーンとミントのメカニズムを設計し、トークンの長期的な価値基盤を維持し、ネットワークの利用者と運営者の間に安定した経済インセンティブ構造を確保しています。

Zamaプロトコルが徴収するすべての手数料は自動的にバーンされ、トークンの流通量が減少します。プロトコル自体はFHE計算に対して手数料を課さず、手数料は主に3つの定量的なプロセス、すなわちゼロ知識証明の検証、暗号文の復号、クロスチェーンブリッジによる暗号文転送に集中しています。開発者がコストを正確に予測できるよう、プロトコルは米ドル建てで料金を設定し、オラクルを通じてZAMAと米ドルの価格を動的に更新し、異なる市場局面でも手数料が安定するようにしています。

Zamaプロトコルは初期インフレ率5%の報酬メカニズムを設定し、ネットワーク内のオペレーターノードをインセンティブしています。これらのノードはFHE計算のコプロセッサーとしての役割や、鍵管理サービスなどの重要なタスクを担っているため、運用を維持するために継続的なトークン報酬が必要です。インフレ率は将来的にガバナンスによって調整可能であり、報酬とトークン価値のバランスを取ることができます。

ネットワーク運営に参加するオペレーターは、ZAMAをステーキングすることで作業資格を得る必要があり、一般の保有者もデリゲーションによってセキュリティ維持プロセスに参加できます。ZamaはDelegated Proof of Stake（DPoS）メカニズムを採用し、トークン保有者は自分のZAMAを信頼できるオペレーターに委任し、ネットワークの安定性向上と報酬の共有を実現し、エコシステムに長期的な協力とインセンティブのループを形成します。

チームおよび投資家紹介

Zamaは暗号学とプライバシー計算分野に特化したディープテック企業であり、暗号学と暗号応用分野で大きな影響力を持つ2人の科学者によって共同設立されました。CEOのDr. Rand Hindiは連続起業家でありディープテック投資家で、2014年から長期にわたりブロックチェーンとプライバシー計算の発展に注力しています。CTOのDr. Pascal Paillierは同型暗号分野の重要な暗号学者であり、彼が提案したPaillier暗号方式は現在も世界中で広く利用されているコアアルゴリズムです。Randによれば、Zamaのチーム規模は90人を超え、そのうち約半数が博士号を持っています。

Zamaは現在までに1.5億ドル以上の資金調達を完了しており、シリーズAで7300万ドル、シリーズBで5700万ドル、最新の評価額は10億ドルに達しています。投資陣には暗号業界のトップ機関、テクノロジー界の重要なプレイヤー、そして多くの著名な創業者が含まれています。シリーズAはMulticoin CapitalとProtocol Labsがリードし、Stake Capital、Metaplanet、Blockchange、Vsquared Venturesなどの機関や、Juan Benet、Gavin Wood、Anatoly Yakovenkoなどの業界著名創業者も参加しています。シリーズBはPantera CapitalとBlockchangeがリードしました。

Pantera Capitalは暗号分野に最も早く参入した大手伝統資産運用機関の一つであり、その投資スタイルはインフラ、基盤技術、長期価値を重視しています。Vsquared Venturesは欧州ディープテックファンド体系に属し、長期にわたりAI、量子セキュリティ、次世代チップなどのハイエンド技術に投資しています。MetaplanetはBitcoin財務戦略企業として、日本のテクノロジー企業やソブリンウェルスキャピタルの支援を受け、戦略的テクノロジーインフラの支援に長けています。Protocol Labsは暗号業界に属しますが、分散システム、データストレージ、研究エコシステムにおける展開は伝統的なテックジャイアントに非常に近いものです。

Zamaプロトコルとその技術概要

Zamaプロトコルは新たなL1やL2ではなく、既存のパブリックチェーン上に構築されるクロスチェーンのプライバシーレイヤーとして位置付けられています。そのターゲットはEthereum、Solana、BNB Chain、Tronなどの主要チェーンを直接カバーし、これらのチェーンの基盤上にプライバシー保護機能を追加することで、パブリックチェーンのデフォルトの透明性によるプライバシー不足の問題を根本的に緩和することを目指しています。Zamaチームは、オンチェーンのすべての金額、残高、行動が完全に公開されているという特性が、長期的に金融機関や大企業のオンチェーンでの大規模利用を妨げてきたと考えており、Zamaのビジョンは、プライバシーをすべてのオンラインおよびオンチェーンアプリケーションのデフォルト設定にすることです。

FHE（完全同型暗号）はそのコア技術であり、「暗号学の聖杯」とも称されています。これは暗号化されたデータ自体に対して直接計算を行うことを可能にし、復号する必要がありません。つまり、すべての演算が「ブラインド計算」状態で行われ、データはライフサイクル全体を通じて常に暗号化されたままです。ブロックチェーンアプリケーションにおいて、FHEはスマートコントラクトが平文を見ずに暗号化された残高や金額を処理できるようにし、公開検証性と機密性の両立を実現します。

Zamaがブロックチェーン分野で果たす役割を理解するために、インターネットのHTTPSに例えることができます。HTTPSがインターネットを平文通信からエンドツーエンド暗号化へと進化させたように、FHEはブロックチェーンを公開透明から完全暗号化へと導き、検証性を損なうことなく真のプライバシー保護を提供します。ZamaのFHE技術にはいくつかの重要な利点があります。まず、セキュリティ面ではポスト量子セキュリティ能力を備えており、将来強力な量子コンピュータが登場しても暗号内容を解読できません。次に、コンポーザビリティの面では、FHEトークンは通常のERC20と同等の組み合わせ能力を持ち、DeFiスタックの構築に直接利用でき、従来のプライバシーソリューションに見られる「アイランド効果」を回避できます。さらに、FHEはネイティブでプログラマブルなコンプライアンスをサポートし、スマートコントラクトが誰がどのデータを復号できるかを定義できるため、アプリ開発者は権限やコンプライアンスロジックを直接オンチェーンに組み込むことができます。例えば、銀行は顧客の残高を確認できますが、一般ユーザーは依然として機密情報にアクセスできません。