主なポイント：

  • プライバシー重視の暗号資産は急騰し、2025年11月までにセクター全体の価値が約80%上昇しました。

  • Zcashは7年ぶりの高値、Dashは3年ぶりの高値を記録し、トレーダーがプライバシー資産にローテーションしました。

  • テクニカルブレイクアウト、デリバティブのポジショニング、そしてZcashの半減期がこの動きを後押ししました。

  • 盛り上がりにもかかわらず、プライバシーコインは世界的なAML規制の強化や取引所でのアクセス制限に直面しています。

プライバシー重視の暗号資産が再び注目を集めています。2025年11月初旬までに、このセクターの時価総額は約80%急増し、一時は240億ドルから250億ドルのレンジを突破しました。

Zcash（ZEC）は7年ぶりの高値を記録し、Dash（DASH）も3年ぶりの高値を付け、主要取引所での取引活動が加速しました。

この動きは典型的なローテーションを反映しています。長期の下落トレンドがついに終わり、ショートポジションはカバーを余儀なくされ、Zcashの半減期を巡る期待が、全体的に停滞していた市場に新たなカタリストをもたらしました。

プライバシーコインが80％急騰：ZcashとDashが再び注目を集める理由 image 0

プライバシーコインとは？

プライバシーコインは、送信者、受信者、金額など、取引の一部または全ての詳細を隠すよう設計された暗号資産です。高度な暗号技術やミキシング技術を用いて、アドレス間の関連性を低減します。

これは、全ての取引が公開され、分析会社が時間をかけてユーザーの身元を再構築できるBitcoin型のパブリックレジャーとは大きく対照的です。

Zcash (ZEC)

Zcashは2つのモードをサポートしています：Bitcoinのようにオンチェーンで可視化されるトランスペアレント転送と、取引詳細を非公開にするシールド転送です。そのプライバシー機能はゼロ知識証明（元々はzk-SNARKs）によって実現されており、取引内容を明かさずにネットワークが検証できます。

Network Upgrade 5（NU5）以降、ZcashのOrchardシールドプールはHalo 2証明システムを使用しています。これは、従来の「信頼されたセットアップ」セレモニーを廃止し、プライベートな支払いを簡素化したゼロ知識プロトコルです。プライバシーはオプトイン方式で、ユーザーは必要に応じてトランスペアレントアドレスとシールドアドレスを選択できます。

ご存知でしたか？ Zcashは勢いが加速し、月間で3桁の上昇を記録しながら約449ドルの7年ぶり高値を付けました。

Dash (DASH)

Dashは、高速かつ低コストのデジタル決済を目的に設計されており、オプションでプライバシーも提供します。ウォレットにはCoinJoinという非カストディアルなミキシング機能があり、複数ユーザーの入出力をまとめて、個々の取引履歴を追跡しにくくします。

CoinJoinはマスターノードを通じて動作し、Dash Coreウォレットで手動で有効化する必要があります。標準の取引はデフォルトでトランスペアレントです。ユーザーはミキシングラウンド数を選択でき、追加ラウンドは否認可能性を高めますが、処理時間とネットワーク手数料もわずかに増加します。

なぜ今ラリーが起きているのか？

注目すべき主な要因は4つあります：

  1. プライバシー志向への動き：コンプライアンス重視のオンランプやブロックチェーン分析が強化される中、一部のトレーダーはより強力なプライバシー機能を持つ資産にローテーションしています。最近のラリーは、このナラティブが再び共感を呼んでいることを示しています。

  2. テクニカルブレイクアウト：ZECは数年にわたる下落トレンドを突破し、レジスタンスを超えたことで勢いが増し、トレンドフォロー型のスクリーニングで他の銘柄も上昇しました。

  3. デリバティブのフィードバック：オープンインタレストと取引量が急増し、ショート勢がカバーを強いられ、ファンディングも反転しました。このような燃料が、急激な動きを持続的な上昇トレンドへと変えることがあります。

  4. 注目と話題：著名トレーダーによる大胆な予想や、数年ぶり高値に関するヘッドラインが新たな関心と資金を呼び込み、センチメントをさらに押し上げました。

これらを踏まえ、前述した各プロトコルについてさらに詳しく見ていきましょう。

Dash：仕組みと位置づけ

CoinJoin以外にも、Dashはスピードと取引の確定性を重視しています。InstantSendはマスターノードのクオーラムを使って取引入力をロックし、数秒以内に決済を確定させます。ChainLocksは最新ブロックを再編成から守り、複数回の承認を待たずに加盟店に安心感を与えます。

その結果、デフォルトの匿名性ではなく、消費者向けのプライバシーツールを備えた「デジタルキャッシュ」となっています。かつて「PrivateSend」と呼ばれていたものは、実際には同じCoinJoin技術です。使いやすさとプライバシーのバランスがDashの最大の魅力です。

Zcash：内部で何が変わったのか

Zcashで最も大きな変化はNU5/Haloアップグレードでした。信頼されたセットアップを廃止し、資金を自動的に適切なプールへルーティングする統合アドレスを導入したことで、プライベートな取引がより強力かつ使いやすくなりました。

コミュニティデータによると、シールドアドレスの利用も増加しています。現在、より多くのコインがシールドプールに保管され、取引の多くがそこを経由しています。デフォルトでシールド送信を行う新しいウォレットがこの傾向を加速させています。要するに、技術が成熟し、ユーザー体験も追いついたのです。

ご存知でしたか？ アナリストは、Zcashの今後の半減期が成長のカタリストになる可能性があると指摘し、ナラティブにさらなる燃料を加えています。

リスク、アクセス、コンプライアンスに関する注意点

参入前に、いくつかの現実的な点を念頭に置いてください：

  • 規制圧力：プライバシー強化資産は、マネーロンダリング対策（AML）規制の下で監視が強化されています。Financial Action Task Force（FATF）はTravel Ruleの完全実施を推進し、欧州連合の新たなAMLパッケージは規制プラットフォーム上で「匿名性強化」コインへの制限を強化、2027年まで段階的に施行されます。

  • 取引所での利用可能性：サポート状況は国や取引所によって異なり、予告なく変更されることがあります。地域ごとの上場廃止もすでに発生しています。例えば、プライバシーコインは一部のEU市場から撤退しており、日本や韓国などの法域では長年にわたり制限されています。

  • ボラティリティと流動性：モメンタムが急上昇すると、オーダーブックが薄くなりスリッページが拡大しやすく、特に取引時間外に顕著です。アグリゲーターに表示される価格と、実際の取引所での約定価格が大きく異なる場合があります。

  • エクスポージャーの得方：利用可能性は法域によります。米国では、間接的な選択肢として店頭（OTC）市場のGrayscale Zcash Trust（ZCSH）があります。欧州の一部では、取引所上場や多様な上場投資商品（ETP）棚を通じてエクスポージャーを得ることが多く、適格性や現地ポリシーに左右されます。

  • プライバシー機能の正しい使い方：Zcashのプライバシーはオプトイン方式で、シールドとトランスペアレントのモードがあります。DashのCoinJoinは手動で有効化・設定が必要です。不適切な利用はメタデータを露出させ、プライバシー効果を低減させる可能性があります。

80%のラリーが本当に示すもの 

プライバシー重視資産の80%急騰は、ナラティブ、テクニカル、レバレッジが組み合わさった結果です。

ZcashとDashは同じものではありません。一方はプロトコルに組み込まれたゼロ知識証明に依存し、もう一方は高速決済とともにオプトインのミキシングを提供します。しかし、どちらも市場がより高いプライバシー需要にシフトすると恩恵を受けやすい傾向があります。

このトレードを検討する際は、まず仕組み、希望する取引所での流動性、そして自国の規制（特にEUの規制が2027年までに強化される点）を確認してください。常にリスク許容度を評価し、プライバシー重視資産への投資判断を下す前に、専門の金融・法務アドバイスを求めてください。